ねぇ、何時でも上手く笑えていたでしょう? 貴方と出会い、少し恐怖を感じたときでも

叩き上げられてきた男だけが持つ猛々しいオーラと

大きく、鍛え上げられた体格と

無愛想で、冷たい視線と

だから師匠に貴方に色々を教えてもらえと言われたときは怖くて仕方が無かった

 

ある日、私は病気に罹りましたね

病弱で頼りない私に心底飽きれたんでしょうね…貴方はこう言った

「オレはお前が嫌いだ」と

貴方は傷つくと思ったんでしょう?

それとも泣き出すと?

それとも「兄弟子!」と呼んでくっ付いて来る事も無いと?

それは大きな思い違いでしたね

だって、私は気づいていたんです

無愛想な中にある仄かな優しさも、冷たい言葉の中にある小さな暖かさも

私を煩わしく思っていることだって…だから私は笑って言ったんです

「そんな事、知っていました」と

 

 

 

ねぇ、何時でも上手く笑えていたでしょう? あの日、貴方に自分の傷を見せた時でも

何故あんな事を話そうと思ったのかは今でも分かりません

いつの間にか口から流れ出る言葉が止まらなかった

死んだ両親の事

双子の兄の事

双子に産まれた為に浮き彫りになった王権と教会の対立

城内に満ちる悪意に満ちた誹謗や中傷

酷い言葉で綴られた手紙や陰口

話終えてから気が付いたように

「だから、嫌われているのは慣れているんです」と笑いながら小さい声で付け足したとき

貴方は気まずそうな顔をしていましたね…攻めた訳ではなかったのに

何も言わずに部屋を出て行ってしまった貴方の後ろ姿を見ながら

言わないほうが良かったかな?とも思いました

 

でも…

 

貴方は変わらず接してくれた

何も聞かずに傍に居てくれた

呪われた双子の王子としてでもなく

貧弱な子供としてでもなく

一人の「男」として接してくれた

分かりづらい仄かな優しさと、本当に小さな暖かさと一緒に…

 

 

 

口から噴出す血を拭いもせず、優しげにオレを見つめる貴方の目は

強い光を失い、虚ろなまま

何か口を動かすけれどそれは言葉にはならなくて

ただ、血を吐き出すだけ

今でもオレより大きい体は力を無くし

大地に投げ出されている

傍による事も出来ずにただ呆然としているオレの目に

「笑え」

そう貴方の口が動いたような気がした

 

 

 

何故、笑わなければいけないんだろう?

何故、そんな事を言うんだろう?

貴方を殺したのはオレなのに

 

 

 

貴方の顔が笑っているように見えて

 

オレは泣きながら笑った

 

…さようなら馬鹿で優しい兄貴 貴方の眠りが安らかであらんことを…

 

 

 

 

 

貴方が「笑え」と言うのならなら、これからオレは笑っていよう。どんなときでも。