あの決勝戦より緊張しながら誘った帰り道
「志波君って、なんかカタツムリみたい」
急に言われた一言
何でだ?そういう顔をすると、蒼凪は何となく?と笑った
「かたつむりって雨の日とか、梅雨に出てくるアレか?」
「そう。そのかたつむり」
「かたつむり・・・」
考え込むオレを見て、何となくだから気にしないでと又、笑う
好きな女にカタツムリに似ていると言われて気にしないでといわれても気になるだろ・・・普通
まだ考え込んでいる俺を見て蒼凪はうぅん・・・と唸りながら話始める
「えっと、見た目がどうこうって訳じゃなくて・・・」
「・・・当たり前だ」
いくらボケボケでも、外見が似ているなんて言われたら、頭を疑う
そう思って蒼凪を見ると、まだ唸りながら考えているようで
「そうじゃなくて」とか「えーっと・・・」とか言いながら俯いたり、空を見たりしながら歩いている
百面相をして歩いてるお前を見るのも面白い
オレは自分で考えるのをやめ、蒼凪を観察する事にした
ふと気が付くと、蒼凪の目の前には電柱
しかも気が付いていない様だ
「おい。」
立ち止まって手を引っ張るとやっと気が付いたらしく
俺を見上げて「ありがとう」と笑顔で礼を言われた
「もういい。お前が考え事をしながら歩くと、いつか事故に遭いそうだ」
怪我でもされちゃ叶わないとそう言うと
「何でだっけなぁ?う〜ん・・・出てこない・・・」
と今度は困った顔
(本当に百面相だな)
クッと笑うと、今度は不思議そうな顔になる
「何で笑ってるの?」
その問いに答えられる筈も無く、笑っていると
「変な志波君!」
そう言って蒼凪も笑い出す
ひとしきり笑うと
「志波君がいいって言っても、私が気になるんだよね。」
と言って又考え込んでしまった
歩き出す蒼凪につられて俺も歩き出す
まだ握ったままの手首は危ないのが判っているから離せるはずも無く
不思議な格好で歩く羽目になる
いや・・・離せないんじゃない
離したくないんだ・・オレが
『お前が好きだ』
『お前に触れていたい』
でも、そんな事言える筈が無い
拒否されるのが怖くて
避けられるのが怖くて
だから・・・何も言えず、進む事も出来ずに殻に閉じこもるんだ
頭を過ぎる言葉
『カタツムリみたい』
お前の言った通りだな
殻に篭ったカタツムリ
オレに良く似てる・・・
「あ・・・カタツムリって、進んだ後がキラキラ光ってるでしょう?」
蒼凪が言った一言に思考と足が止まる
「だから、それが似てるんだと思う!」
唐突に思考を遮断され、だからと言われても判るはずは無い
ポカンとしている俺にえっと、と言って蒼凪は話し出す
「カタツムリって、そんなに早く進めなくって、ゆっくりゆっくり進むでしょう?
でもね、どんな所でも真っ直ぐに進んでいくの。垂直の壁だって、どんな場所だって・・・
どんなに時間がかかっても、自分の力で行きたい場所に行くの。
志波君も、どんな事だって諦めなかったでしょ?
どんなに時間がかかっても、真っ直ぐ進んできたでしょ?
だから、志波君の行きたかった場所に行けたでしょ?
カタツムリが進んだ後キラキラ光ってるのは、カタツムリが努力したって証拠!
志波君の後ろにも練習っていうキラキラがあるから、甲子園で優勝出来たんだよ!
・・・だから、カタツムリに似てるの!」
「やっぱり、判らないよ・・・ね?」
困り顔で俺を見上げる蒼凪に
「いや・・・何となく・・・判った」
そう告げると嬉しそうに笑った
でも、お前は間違えてる
オレは一度諦めた
そして、真っ直ぐに進んで来たのかも判らない
それに、一人でここまで来られたんじゃない
オレには、仲間が居た
そして・・・
「あ!志波君、手、ごめんね?ありがとう」
声に気づくといつの間にか、何時もの分かれ道
掴まれたままの手にやっと気が付いた蒼凪が恥ずかしそうに笑って礼なんて言うから
手を離したくなかったなんて言える筈もなく
「いや・・・」
そう言って手を離した
「じゃあ又明日。」
笑顔で言って、歩き出したか、と思うと振り返る
気をつけて帰ってねと付け足して又歩き出す蒼凪を見ながら思った
殻に篭るんじゃない
きっと、考えていたんだろう
いつ進むべきか、どこに向かうべきかを
そして、進む
ゆっくりゆっくり
真っ直ぐに
振り返らずに
諦めずに
目的の場所に行けるまで
自分だけの力で
「だから・・・見守っていてくれ。お前の傍にたどり着けるまで・・・」
もう随分小さくなった蒼凪の背中にオレは呟いた
志波SS・・・難しかった!!お題は早めに決っていたものの、形にするのが大変でした
どうやって、終わらせよう?とか色々考え、凄く時間がかかったのに、この結果・・・
素敵なSSを書く作家さん達が殊更神に思えました
カタツムリは、童謡でも歌われている通り、篭ってしまうという捕らえ方が多い気がしますが
こいち的主人公は努力家だと言っちゃいます。そこに志波が惹かれた・・・らいいなぁ!
ところで、あのキラキラって何なんでしょうね?