「くだらない」と思える質問でもその質問には意味が必ずある
それは出題した人間にとってか、答える人間にとってか、それとも全く関係ないと思われる誰かにとってかは判らない
あの質問はその全てを持っていた―酷く重たい意味を
でもそのときのぼくはそんなことに気がつかなかったし、答えは心に出ていた
だからこそ自分自身が間違っていないと思う答えを口にした
そして答えを出したその時に、ぼくを取り巻く全てのことが変わったことにすら気がつかなかった
「…そんな事…ありえません」
彼に言い渡された命令は『裏切り者』の討伐。
しかし、その『裏切り者』の中にある人物の名があがった瞬間、彼はそう呟いていた。
「信じられないのは分かるよ。だって君は彼を酷く信頼していたようだからね?」
労わるようにそう言う国王はどこか楽しそうだ。
「ユハニ上等兵…信じる、信じないはこの際関係ない。これは事実だ。」
「そんな…そんな事は絶対にありえません!!」
冷たい言葉が心の隅々まで冷やしていったが、それでも尚彼は信じることは出来なかった。
俯いたまま「そんな事ありえない…絶対に…」と繰り返す。
何故ならば、裏切り者の一人として名を上げられたのは彼が敬愛し兄の様に慕う姉の恋人の名だったからである。
「どんなに僕たちが言っても彼は信じなさそうだよ、バジリオス?」
「では…信じられるように手伝って差し上げることにしましょうか」
退屈そうな国王の質問にどこか楽しそうな声が答えた。
彼が連れて行かれたのは軍の医療施設だった。
何も言えず何も考えられないまま、また彼はただ目の前の背中に付いて行く。
「ここだ、入るぞ。」
そう言って開け放たれた真白い扉の中に居たのはあまりにも無残な人間の欠片だった。
あまりの悲惨な光景に彼は凍りついたように動くことが出来なくなる。
冷静な感情の無い声が彼を現実に引き戻した。
「この兵はビーストキングダムへと赴いた兵だ。」
「……なぜ…」
「ここに居るのか、か?こんな場所に連れて来たのか、か?」
そう言いながら将軍は人間に似た形をした生き物に近づいて行く。
そして扉の前に立ちすくむ彼に聞こえるように聞いた。
「答えろ。誰にやられた?」
「お…同じ……ペ……ダン………な……ぜ…」
「お前の部隊の他の兵たちは?」
「こ…され…」
視線の先から聞こえた答えは酷く擦れて小さいものだったけれど、彼の耳に酷く鮮明に届いた。
「「同じペダン軍なのになぜ」」
「「殺された」」
「…ユハニ上等兵、聞いての通りだ。裏切り者は存在する。…お前のその目で見てくるが良い。そして…この先はお前が先ほど答えたことを実行しろ。」
肩に置かれた手とその質問に彼はしっかりと頷くことで答えた。
ここならば『裏切り者』と対峙出来る筈だと言われた大地の割れ目へと向かう飛空挺の中、彼は考えていた。
裏切った者たちは一体何を考えていたのか?と。
裏切りは国への反逆。つまり、国に居る自分の家族、血縁者、恋人、友達を危険に晒すことになる。
しかもペダンはこの世界でも孤立している国だ。他の国へと逃げることも出来ないまま、その残された人たちは『裏切り者と縁あるもの』と言うだけであらゆる中傷を受けなければならない。
それだけではない。裏切りの重さによってその残された者たちに『制裁』が加えられる場合もあるのだ。
そして今回彼に討伐されるべき裏切り者の罪はSランク―最高に重い。つまり、残された者への『制裁』は軍によって必ずされるだろう。
しかもかつて仲間だった兵を殺し、決して知られてはいけない自国の情報を他の国へ渡し…自分の故郷を壊そうとしている。
「裏切るなんて、絶対に、無い。」
「だって、そうじゃないか…裏切るなんて、考えられない。あの、お人よしで、誰よりも優しい、“彼”の筈は、無い。」
「絶対に、違う。」
彼は自分の考えをかみ締めるように呟いた。
彼は大地の裂け目と呼ばれる場所に降り立つ。
ぱっかりと裂けた地面は落ちれば命は無いと判るほど深い。
その底から吹き上げてくる風に吹かれながら彼は裏切り者が来るのを息を呑み、待つ。
遠くの空に雲ではない影が見え、そして近くの草地に何かが降り立ったのがわかった。
この時、ぼくに迫られた選択は「信じるか、信じないか」
一度目は「信じない」を選んだ
誰に何を言われたって信じないことがある
信じたくないことがある
でも答えは呆気ないほど目の前に示された
だから二度目は「信じる」を選んだ
ぼくの目の前の光景を
ユハニと戦う場所は攻略本では『黄金街道』と書かれていますが、あの橋一つで深い崖(?)を結んでいるところと3で言えば大地の裂け目だったので大地の裂け目だということにしました。